2013年3月22日金曜日

あれから2年、福島の事故から学んでいないアメリカ



『あれから2年、福島の事故から学んでいないアメリカ』
         
                by リチャード・シフマン、英国新聞『ガーディアン』

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2013/mar/12/fukushima-nuclear-accident-lessons-for-us?INTCMP=SRCH


(全訳)


 "核はいらない!!""子供達を救おう" とボードに書かれたメッセージを叫びながら 土曜日の東京では街頭で何万という人が、 デモを行っていた。彼らは2011年3月11日、大地震と津波によって引き起こされた福島第一原子力発電所のメルトダウン事故の2周年メモリアル記念を前に抗議活動をしていた。

"私は広島、長崎、福島は何事もなかったかのように行動する人たちと戦うつもりです、"ノーベル賞受賞作家大江健三郎氏は、東京の観客に語った。 月曜日には、日本政府と福島第一原発の施設を運営する東京電力(TEPCO)を相手取り、800人の原告に構成された集団告訴が提出された。被害地と被害者の住居を地震が起こる前の状態に回復させることを要求して。

福島のサイトは、そこが地球上で最も放射性の強い場所の一つで、その恐ろしく難しいクリーンアップ作業には40年以上と数十億ドルのコストが数十かかると予想される。といった状態ままである。16万人に上る被災者の一部は、汚染により生計と土地(その土地ではこの先何世紀かの間は、農業を営めなくなってしまっている)を失い、未だ仮設住宅に住んでいる。

事故に応じ、日本の当局は、第2次世界大戦の終わりに原子力爆弾により、2つの都市を失った国の中において、「反原発」が一般民衆に支持されている動きであり、反核感情が根深い場所であるという事も考慮して、全国の54の原子力発電所を停止させた。しかし、電力不足や増大する産業業界の圧力に直面すると、石油や石炭などの資源に乏しい日本は、一旦は閉鎖していた原発を再起動し始めた。そして2013年末までにさらに6つの原子炉を再稼働させる予定だ。12月に就任した、‘原子力のプロ’政府の首相、安倍晋三氏は新たな原子力発電所の建設プランさえも語っている。

いつものごとく、この緩やかな’‘ビジネス’‘へのUターンは、福島からどれほどの教訓を得たのかといういくつかの疑問を抱かせるに至らせた。

日曜日の’’福島の放射能は怖れていたほどは致命的ではない’‘というブルームバーグビューで公開されて論評をみたところ、あまり教訓は受けてはいないようだ。
ロバート·ピーターゲイル教授や作家のエリック·ラックスは
『原発事故の際に出る放出放射線よりも石油や石炭火力発電所で発生する大気汚染で死亡する人の方が多い』と主張する。

彼らはチェルノブイリに続く、歴史上2番目に大きい原子力事故から、ひどく汚染された工場敷地内や周辺の住民の一時的な仮設住宅地には踏み込まずして、それほど被害が大きくなかったと結論づけた。そして、一般の "放射線による健康リスクの懸念は’’"実際にはほとんど根拠がない"。と。

日本政府もまた、福島の影響を軽視することを熱望している。批評家は、事故後、当局が福島の周りの避難区域エリアを拡張することが遅かったことや、汚染レベルに関する重要な情報を差し控えたことが避難の遅れにつながった、と糾弾した。

ニューヨーク·タイムズ紙は以下のように報じた。

’’  "原子力事故災害以後、政府は人々の法的な放射能被爆の限界数値を、1年につき、1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げた。それは子どもを含んでである。事実上 彼らに古い規定の元では禁止されたであろう場所であったとしても、その地域社会での生活を継続することを許可している。"

真実としては、福島の事故が、日本国内に住む公衆の人体に、いかなる影響を及ぼすのか?ということをを言う事はまだ、そして先にも、誰にも言う事ができないということだ。典型としては、放射能に関連ずけられているガンや白血病のような 慢性的な病気は被爆してから発症するまで数年かかる。しかし、1月末に発表された報告書はもっと早期の懸念の種を記している。福島県の健康管理調査が、福島に住む子供達、94975人に超音波テストを行った所、その44.2%が、時にガンの前駆体となり得る小さな甲状腺結節と嚢胞を持っていたことを明らかにしたのだ。その異常の数は調査の行われているこの過去2年間で増加しているという。

スタンフォード大学の科学者は、そのメルトダウンからの放射能によって、全体として平常時と比較した場合、上限2500人ほどの癌症例患者(主に国内で)を増やし、1300人のガン死亡者を増加させてしまうかもしれない。と推定している。 3Dグローバル大気モニターを使用し行った昨年の調査では、もし卓越風がそのほとんどの放射能を比較的無害な海に吹き飛ばさなかったら、その影響は10倍以上だっただろうと推定された。 (不幸な中にも)"たくさんの’‘幸運’‘が重なった"とその報告書の共同執筆者であるマーク·Z. ジェコブソン氏は述べている。

アメリカは、将来に潜在的する3・11事故から身を守るために、’’運’’に頼るべきだろうか?UCS(憂慮する科学者の会)のキャリアのある科学者 エドウィン·ライマンによるとそうではない。ライマンは私に、福島の事故の後、「特別対策委員会」(NRC)は、米国が、その事故から学ぶべき教訓を確認するために‘特別対策本部’を設定したということを私に教えてくれた。その特別対策本部は、他の原子力発電所においても、福島で起こったような、停電が拡張した際に、炉心がメルトダウンしてしまうということにならないように対処できるようアップグレードすべきだと奨励している。


しかし、原子力産業は、NRCによって提案された新しい規制に食ってかかった。そしてその代わりに"FLEX"(多様かつ柔軟な対処方)と呼ばれる独自の自主的プログラムを提案した。ライマンは、より信頼性の高い機器を購入し、緊急時のバックアップシステムをめかしこむことを含んでいるFLEXは、正しい方向への一歩ではある、と言う。しかし彼は、それが将来の3・11を防ぐのには「全く充分ではない」と考えている。ライマンによると、原子力産業はNRCにそれが考案した厳しい新規制の代わりに、"半分の尺度"で FLEXのプログラムを受け入れるようにNRCに政治的に働きかけているのだという。

加えて、それに応じるよう議会からの圧力も大きくなっている。ミシガン州の共和党で、下院エネルギー委員会の議長であるフレッド·アプトン議員(彼のキャンペーンの最大の貢献者にはいくつかの核や電力業界が含まれている)は、規制当局に業界の計画に対し合意のサインを取得しようとする動きのリーダーの一人である。

皮肉なことに、アプトン氏の地区には、ミシガン湖のほとりにあるパセリーズ原子力発電所があり、その老化の進んだ原発は近年、シャットダウン、リーク、機器の故障が度重なって起こっていているために悪名が高い原発施設だ。その施設は、過去3年間で3度の(一つ間違えれば大惨事につながる)"ニアミス"をこうむった。

昨年末に出された痛烈なレポートではNRCの規制の失敗に対し、UCS(憂慮する科学者の会)はパリセーズの冷却水漏れの際、規制では6時間以内にシャットダウンしなければならないとされている危険な状態のまま、ほぼ1ヶ月間、そのままでいることを許可された、と述べている。更にそのレポートは"NRCはこういうタイプの規制の冒涜に対し、何らペナルティーを背負わせる事なく許してしまっている。それ故に、発電所の所有者による不毛な意思決定を可能にしているのだ’’と続いている。

現在、いくつかの新しい原子力発電所を建設する予定が進む中、アメリカの核の施設は、老齢化がすすみ、ますます事故を起こしやすくなってきている。使用済み燃料棒も蓄積し、取り組まれていない安全上のリスクをもたらす。多くの発電所が川沿いや海岸沿いにあり、ということは、そこは洪水による危険に直面している場所だということだ。その他の原発はというと、福島のメルトダウンに教えられたような、地震の起こりがちな地域にある。

111万人のアメリカ人が原子力発電所から50マイル以内に住んでいる。これまでのところ、彼らは幸運だった。しかし、その運がいつまで続くかということを述べる事は誰にもできない。




『喉元過ぎれば、熱さを忘れる』という慣用句があるように、人はつらかった事、
苦しかった事も、時が経てば忘れてしまうものだ。

しかし、喉に火傷を負った人は、忘れようにも忘れられはしまい。



私たちは3.11から一体「何を」学んだのだろう??

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                        (3・20現在)

世界は未だ「3.11」に関心を持ち、その行く末を見つつ、

考えている。







 

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